自然観察日記

身近な生物と人と環境の関りを再考するブログ。つまりは飼育栽培観察日記。

[文献紹介]試験管培養でコロナリウムとグランデの胞子体、配偶体の成長

胞子培養の論文。コロナリウムとグランデの成長過程が写真いっぱいで載っています。

"Sporophyte and gametophyte development of Platycerium coronarium (Koenig) Desv. and P. grande (Fee) C. Presl. (Polypodiaceae) through in vitro propagation"

Reyno A. Aspiras 2010

ビカクシダ属は商業的価値が高いため野生個体は盗掘にあうことが多く絶滅の危機に脅かされています。胞子による培養技術の開発はこのような希少価値の高い植物を維持するために不可欠です。

この論文ではコロナリウムとグランデの胞子嚢や胞子の形態と胞子から胞子体が成長するまでの培地の影響が報告されています。

注目したいのは培地の成分で、糖分があると胞子の吸水、発芽が早まるとのこと。糖分はエネルギーの材料なので胞子内部の代謝が活発になるのではないかと考えられています。

コロナリウムはグランデよりもやや成長が早く27日程度でハート型の前葉体ができ、グランデは33日ほどかかるようです。

胞子体ができたらヘゴ板とマホガニーの枝に直接くくりつけ温室で栽培するとマホガニーが成長が良かった。マホガニーの孔が保水性が良かったのが原因かもしれないとのこと。

[引用]

RA Aspiras - Saudi journal of biological sciences, 2010 Sporophyte and gametophyte development of Platycerium coronarium (Koenig) Desv. and P. grande (Fee) C. Presl.(Polypodiaceae) through in vitro

 

 コロナリウムとグランデの胞子培養をしようという時に参考になりそうな論文です。胞子の形から胞子体が作られるまでどれくらいかかるのかが記載されています。

胞子用の培地に糖分を加えると成長が良くなるそうです。これはいま準備しているリドレイ、エレファントティス、マダガスカリエンスの胞子培養にも応用できそうです。培地に混ぜるか、もしくはスプレーでもいいかもしれませんがカビとの戦いになりそうです。

ハンギング用の下地材としてヘゴ板はよく使われますが、素材としての保水性がそれほど良くないようです。ただビカクシダの栽培では水苔を挟むことが多いと思うので直接は関係がないのかもしれません。